コロナ禍でも容赦なく襲ってくる自然災害──。
2019年9月未明、千葉県に上陸した台風15号により、南房総地域は長時間ライフラインが断たれました。国や県などの行政機関は災害を過小評価し、災害救助法の適用をしませんでした。この教訓を活かし、コロナ患者の受け入れをいち早くした同県鴨川市の亀田病院は、特高受電設備等により停電・断水を防ぎ、いかなる場合も通常通り、また基幹災害拠点病院としての役割を果たしています。冷暖房の効いた院内の休養スペースや携帯電話の充電のための電源を地域の人々に開放し、停電・断水が続く介護施設や医療施設に必需品や発電の提供の他、医療チームを派遣しています。
一方、埼玉県の民間病院が新型コロナウイルスの専門病院に移行しました。全国最大規模で主に中等症の患者を受け入れます。そうすることで、一般病院は本来の業務に専念でき、その棲み分けが、ひいては地域利用の効率化を図ることに結び付くというものです。
コロナの終息が望めない以上、医療機関は院内感染のリスクが低減され、患者が安心して外来を受診できるよう収束を目指すべきでしょう。地域に根差すには、そこに住む人々との信頼関係が何より大切です。最近の医師は、患者の目を見るより、パソコンを見る方が多く、直診すらしないという不満を耳にします。無論、患者側にも注意すべき点はあるでしょう。些細なことで救急車をタクシー代わりに呼び、救急病院を利用する行為(最近は民間の救急車もあります)や何かにつけ病院側を訴える行為は控えるべきです。また、コロナ禍においては、診療時間を有意義に使えるよう、あらかじめ医師に病状や求めることをメモしておくことをお勧めします。
日本は諸外国とは違い全体の約7割が民間病院ですから、各病院がその特性を活かし、連携していけば苦難も乗り切れるはずです。新型コロナウイルスも災害──。韓国では、感染症も防災の一部です。
どんな状況下でも自然災害は待ってくれません。避難の仕方もこれまでとは全く違います。「密」を避けるため避難所の収容人数は約半分です。そのことを想定し、自宅・車中泊(エアコン放出除菌や車内丸ごと除菌も可)も考えるべきなのですが、今では感染源の約7割は家庭内であること。
警察庁の調べでは、自宅で新型コロナウイルス感染症で亡くなられた人の数は250人(2021年8月現在)。また、厚生労働省の調べでは、自宅療養者数が、埼玉を除く全国で11万8035人(2021年8月末現在)にも及んでいます。
自然災害の被害を最小限に抑えるためには事前の備えが必要です。四方海に囲まれている我が国は津波の恐怖があります。地震予知は、東京大学地震研究所他、各機関が研究を重ねていますが、過去に国が研究費を打ち切った経緯があり、予知は不可能とされています。
常に「もしも?」を考え臨機応変に行動しましょう。災害対応において、情報が入らない時は最悪の状況を前提とします。全てにおいて「自助」──。自分の身は自分で守る。助けられる側にならないよう、一人一人が危機感を持って行動することこそが、日本を守ることに繋がると思います。
NPO法人日本防災士会参与・ 社会貢献学会理事・一般社団法人
防災安全協会顧問 半田 亜季子
著書:「あなたは次の災害で 生き残れますか?」 近代消防社刊
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災害時、食料や飲料水、衣類など必要不可欠なもののほかに、最も重要な問題の一つとして、停電で携帯機器の電池切れによる情報の遮断があります。2011年3月11日に発生した東日本大震災後、エネルギー源としてガソリンや乾電池、携帯電話の充電器が深刻な問題に上がっておりました。今日の日本にとって情報収集や通信の手段として携帯電話やスマートフォンがあたりまえに使用されております。電池切れにより情報が得られない状況は、家族の安否確認ができず事業の継続にも支障をきたし、被災者の不安やストレスを増加させておりました。
そこで、福島県いわき市に工場を持ち、東日本大震災で被災した古河電池(株)は、震災時に得た「何が本当に必要だったのか?」という経験を生かし、避難所などに設置して簡単に多数の携帯機器へ電力を供給できる、『マグネシウム空気電池MgBOX』を凸版印刷(株)と共に開発しました。
製品のコンセプトは、非常時に避難所等で使用することを想定し、
①簡単に使用できること
②簡単に廃棄できること
③携帯電話やスマートフォンが充電でき、LED照明にも対応できること
④長期保存が可能なこと
⑤安全が担保されていることでした。
これらのコンセプトに対し、
①に関しては、水を入れるだけで発電するように、②に関しては、紙製とすることで一般ごみとして廃棄できるように、③に関しては、USB端子を設けることで対応、④に関しては、保護フィルムで包装し長期保存を可能に、⑤に関しては、難燃性マグネシウムを材料に用い安全性を確保し、さらに使用中も有毒な排気ガスや騒音が発生しないように設計・開発を致しました。この様に災害時、「MgBOX」は携帯機器の充電ができ、安否の確認や情報の遮断を防ぐ事ができます。
2018年9月6日(木)未明、北海道胆振東部を最大震度7の地震が襲いました。地震そのものの大きさもさることながら、その後に起きた北海道全域の停電、ブラックアウト≠ヘ私も直面した大きな災害で、食料や飲料水不足に加え、携帯機器の充電切れは不安を増大させ冷静な判断にも影響が出るほどでした。
携帯機器を使用する事で充電量は減って行き、家族やお客様とは必要最低限の連絡しか取れない事で不安な日を過ごしました。その様な時に、弊社内でも「MgBOX」が活躍してくれました。「MgBOX」1台でフル充電30回行えるため、多くの社員が不安から解放されました。
ここから「MgBOX」の機能について説明させて頂きます。
特徴については上記で述べさせて頂きましたが、水が不足して使用が出来ない場合では、海水や雨水、風呂の残り湯でも問題有りません。泥水や尿でも発電は可能です。(不純物が多い場合、発電量はやや落ちます。)
使用する水の量は2lで、500mlを4箇所に分けて注入します。ペットボトルで計量でき、非常時にも使いやすくなっております。
外箱や仕切りなどはダンボールや特殊紙を使用しており、強度保持や密封性保持を考慮した材質設計・構造設計を施しております。また、凸版印刷が開発したバリアフィルム(GLフィルム)で密封包装され品質保持に配慮しております。この事により長期間保管(最大5年)された後でも、内部を湿気や酸化から守り、品質劣化を防止します。
またMgBOXは、環境に配慮しマグネシウム空気電池を使用しており、有害物を含みません。さらに、負極活物質であるマグネシウム金属は、海水に含まれる物質で地球上に大量に存在しており、日本国内でも採取可能な金属です。
自動車用バッテリーやリチウムイオン電池などが、製造事業者が確立した処理ルートに従った廃棄が使用者に求められている中、「MgBOX」は有害物を使用せず、さらに前述の通り紙製容器を採用したことで、使用者自身が分解し、一般的なごみ処理ルートでの廃棄を可能としました。
この先予想される、南海トラフ地震や首都直下型地震など、災害や温暖化による気象変化が起こす甚大な災害に対し、自治体や企業、学校、各施設での備蓄防災用品のひとつとしてお勧めいたします。
凸版印刷株式会社北海道事業部 田川 哲也 |
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